マンション買えない層の一戸建てシフトとは| 工務店の押さえるポイントを解説

新築マンションの高騰により、「本当はマンション希望だけれど、予算的に難しい」と一戸建てに切り替えるお客さまが増えています。こうした一戸建てシフト層に、従来と同じ感覚で提案してしまうと、成約に至らないだけでなく、口コミや紹介の機会も逃してしまいます。
本記事では、マンション派から一戸建てに移る層の特徴と、工務店が押さえるべき提案のポイント・注意点をコンパクトに整理し、「選ばれる住まいづくり」の進め方を分かりやすく解説します。
マンション高騰で進む「一戸建てシフト」とは?
「一戸建てシフト」とは、本来は都心や駅近のマンションを検討していた人が、価格や広さ、将来の暮らしやすさを考え、一戸建て住宅へと方向転換する動きのことです。土地代や建設費の高騰で新築マンションは価格が上がり、同じ予算では希望の広さや立地を得にくくなりました。
その結果、少し郊外でも延床面積に余裕があり、駐車場や庭付きで生活空間を広く確保できる一戸建てを選ぶ世帯が増え、「欲しくてもマンションが買えない層」の現実的な選択肢として一戸建てが注目されています。
マンション派が一戸建てに切り替える3つの理由
新築マンションの価格高騰が続くなか、本来はマンションを検討していた人が、一戸建てへと目を向けるケースが増えています。
ここでは、とくに「マンション派」が、なぜ一戸建てへ考えを切り替えるのか、その主な理由を整理して解説します。
予算オーバーでマンション取得を断念している
マンションから一戸建てに切り替える大きな理由が、月々の支払い負担です。希望エリアの新築マンションは、物件価格に加えて管理費・修繕積立金・駐車場代などの固定費がかさみます。その結果、同じ返済額でも、一戸建てのほうが広さや設備を確保しやすいケースが少なくありません。
家計に無理のない返済を優先し、現実的な選択肢として一戸建てを選ぶ人が増えています。
広さ・間取りへの不満が強まっている
在宅勤務や子育てが広がるなか、約70m2前後のマンションでは「個室も収納も足りない」と感じる世帯が増えています。一戸建てであれば、ゆとりのあるLDKに加え、ワークスペースや子ども部屋もつくりやすく、間取り変更や将来のリフォームもしやすいのが特徴です。
暮らし方に合った空間づくりを重視する人ほど、一戸建てに目が向きやすくなっています。
生活音・子育てストレスを減らしたいニーズがある
上下階への足音や子どもの泣き声を気にせず暮らしたい、という思いも一戸建てシフトの背景にあります。
集合住宅では生活音への配慮から、子どもの遊び方や時間帯を制限せざるを得ない場面がどうしても生じますが、一戸建てなら隣家との距離や庭の活用により、音のストレスを抑えやすくなります。
子育て期をできるだけ穏やかな気持ちで過ごしたい家庭ほど、一戸建ての環境に魅力を感じやすいといえるでしょう。
「一戸建てシフト」工務店が押さえるポイント
マンション高騰による「一戸建てシフト」が進むなか、工務店にはこれまで以上に“マンション派の価値観”を理解した提案力が求められています。
ここでは、一戸建てを検討する顧客に選ばれるためのポイントを解説します。
マンションと一戸建ての総支払いコストを比較する
まずカギになるのが、マンションと一戸建ての「30年トータルコスト」の比較です。
物件価格やローン返済だけでなく、マンションなら管理費・修繕積立金・駐車場代、一戸建てなら将来の外壁・屋根工事などを一つの表にまとめるなど、モデルケースで総支払額を試算し、グラフやシミュレーションで「見える化」することで、月々の負担と将来費用のバランスを冷静に判断してもらえます。
数字を使った説明は、一戸建て提案への信頼感につながります。
マンション並みの利便性・安心感を設計で補う
「マンションのほうが便利で安心」というイメージを、設計でどこまで埋められるかも重要です。駅への距離や共用サービスの差は、家事動線を短くするプランニングや、宅配ボックス・スマートロック・インターホン計画などで補うことができます。
さらに、断熱・防音・防犯性能を高めることで、静かで安心して暮らせる環境を整えられます。「一戸建てでもマンション並みに快適」という根拠を具体的に示すことで、一戸建てに踏み切る心理的ハードルを下げられます。
暮らし方から逆算してプランを組み立てる
一戸建てシフト層には、土地や建物のスペックよりも「暮らし方へのフィット感」を言葉にして伝えることが有効です。
家族構成や働き方、在宅勤務の有無、家事・子育ての一日の流れをヒアリングし、その動線に合わせてLDK、水回り、収納、ワークスペースを組み立てていきます。
たとえば、玄関〜ファミリークローゼット〜洗面の動線や、キッチンと子どもの学習スペースの位置関係など、具体的な生活シーンと結び付けて提案することが大切です。
暮らしから逆算したプランは、「一戸建てならではの納得感」を生みやすくなります。
中古一戸建て+リノベを有力な選択肢として提示する
予算に制約がある層には、「中古一戸建て+リノベーション」をマンション購入と並ぶ選択肢として提示すると効果的です。築年数だけで絞り込まず、断熱・耐震・水回り改修をセットにしたパッケージを用意することで、「同じ総額なら、マンションより広く、性能も底上げできる」という比較軸を示せます。
標準的な工事内容と概算費用をあらかじめメニュー化しておくと、顧客もイメージしやすくなります。 中古一戸建て+リノベの提案を引き出しに持っていることが、一戸建てシフト層のニーズを取り込むうえで重要です。
工務店が「一戸建てシフト」する際の注意点
マンション高騰を背景に一戸建てを選ぶ人が増える一方で、購入後に「イメージと違った」と感じるケースも出やすくなっています。
ここでは、工務店が「一戸建てシフト」に対応する際に押さえておきたい主な注意点を解説します。
価格と広さだけで“お得感”を訴求しない
「マンションより安くて広い」という訴求は分かりやすく魅力的ですが、それだけを強調すると、後になって通勤時間や買い物環境、教育施設へのアクセスなどとのギャップが不満につながりやすくなります。
物件価格や延床面積だけで比較するのではなく、交通費や移動時間、周辺環境も含めた「暮らし全体の条件」として説明することが大切です。長く住む家だからこそ、目先のお得感ではなく、“総合的な満足度”を基準に検討してもらいましょう。
将来のメンテナンス費とランニングコストを共有する
一戸建てにはマンションのような管理費や修繕積立金はありませんが、その一方で、外壁塗装や屋根の改修、給湯器など設備機器の交換といったメンテナンス費用が、一定のタイミングでまとまって発生します。
おおよそ何年後に、どの部位へどの程度の費用がかかりやすいのかをあらかじめ説明し、10〜20年スパンのメンテナンスコストも含めて資金計画を立ててもらうことが重要です。
入居前にこうしたランニングコストのイメージを共有しておくことで、将来の「想定外の出費」から生じる不満を減らすことができます。
立地・災害リスクを正直に伝える
安心して暮らしてもらうためには、立地に関わるリスクを隠さず伝える姿勢が欠かせません。
洪水・土砂災害のハザードマップや液状化の可能性、周辺の避難経路などを一緒に確認し、どんなリスクがどの程度あるのかを具体的に共有します。
そのうえで、必要な火災保険・水災補償の検討に加え、宅地計画や設備配置による防災対策も併せて提案できると理想的です。
メリットだけでなくリスクも含めて説明することで、顧客が納得して土地と住まいを選べる関係づくりにつながります。
記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:一戸建てシフトとは?
A:もともとは都心や駅近のマンションを検討していた人が、価格や広さ、将来の暮らしやすさを考え、一戸建てへ切り替える動きです。マンションが手の届きにくくなるなかで、郊外のゆとりある一戸建てが現実的な選択肢として注目されています。
Q:マンション派が一戸建てに移る理由は?
A:マンション派が一戸建てに移る主な理由は3つあります。まず、管理費や修繕積立金がかかるマンションより、月々の負担を抑えたいこと。次に、約70m2前後の広さや収納では手狭で、もっとゆとりが欲しいこと。そして、生活音や子どもの声を気にせず暮らしたいというニーズです。こうした背景から、自分たちの暮らし方に合う住まいとして一戸建てを選ぶ人が増えています。
Q:一戸建てシフト層へ提案するときのポイントは?
A:マンションと一戸建ての「30年トータルコスト」を比較し、総支払額や将来の出費を数字で示すことが重要です。あ併せて、暮らし方に沿った動線や性能向上の提案、中古一戸建て+リノベといった選択肢も提示し、「一戸建てを選ぶ理由」に納得してもらいます。
Q:一戸建てシフトに対応するときの注意点は?
A:「マンションより安くて広い」だけを強調せず、通勤や買い物、教育環境など暮らし全体の条件を一緒に確認しましょう。将来のメンテナンス費やランニングコスト、立地や災害リスクも正直に伝え、総合的に納得して選べるようサポートすることが大切です。
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。



