値上げしても顧客が離れない! 粗利率を守る工務店見積もり戦略まとめ

資材価格の高止まりと人件費の上昇が続く今、値上げは避けられません。しかし、伝え方と仕組みを整えれば、顧客の納得を得ながら粗利率を守ることは可能です。
本記事では、値上げしても顧客が離れない見積もり戦略を実務の手順と話法まで解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
建材価格高騰・人件費上昇の現状
建設現場のコストは、人件費の上昇と資材価格の高止まりが同時進行しており、見積もりと契約、工程の組み直しが避けられない局面にあります。
ここでは、建材価格高騰・人件費上昇の現状について解説していきます。
人件費は継続的に上昇している
人件費の上昇が続いています。国土交通省が公表した「公共工事設計労務単価(2025年3月適用分)」では、全国全職種の平均が前年より6.0%引き上げられ、これで13年連続の上昇となりました。
深刻な人手不足や賃上げの広がりを背景に、この傾向は民間工事にも波及しており、外注費や現場管理費などのコストも上昇基調にあります。
建材・資材価格の高止まりが続き、さらなる上昇のおそれがある
建材や資材の価格は依然として高止まりの状況にあり、今後さらに上昇する可能性も指摘されています。
日建連が公表した2025年9月版の資料によると、資材価格は2021年1月比で約37%上昇しており、全体の建設コストも25〜29%増加しています。
鋼材やガラス、設備機器などの価格高止まりや納期の遅れも続いており、為替の変動や地政学的リスクの影響次第では、再び価格が上昇に転じるおそれもあります。
工務店が直面する粗利率低下の3つ課題
建材・労務費の上昇に対し、価格転嫁や工程設計が追いつかず、案件の採算は想定以上に目減りしやすい局面が続いています。粗利の「漏れ」は、見積もり段階・契約段階・現場運用など、さまざまな場面で起こります。
ここでは、工務店が直面する粗利率低下の課題について具体的に解説していきます。
原価上昇を価格に転嫁できず、利益を圧迫する
資材や労務の上振れが見積もり提出後に顕在化しても、契約条項や交渉設計が整っていないと単価改定ができず、差額を自社負担しがちです。
見積もり有効期限の長期化、指数連動やスライド条項の未整備も要因で、結果として粗利率を圧迫します。近年の資材・労務の上昇トレンドを前提に、契約変更協議の運用を標準化する必要があります。
人件費の上昇と工期の長期化でコスト負担が増大する
売上総利益率(粗利率)は建設業で概ね20〜25%前後が目安とされ、これを下回る状態が続くと販管費を吸収できず資金繰りが悪化します。資材高騰や工期長期化で粗利が細ると、与信の低下や赤字案件の連鎖を招き、倒産リスクが顕在化します。
決算動向でも原価高と長工期による粗利率低下の事例が報じられており、早期の実行予算管理と価格転嫁の徹底が不可欠です。
経営体力の低下で倒産リスクが拡大する
売上総利益率(粗利率)は建設業で概ね20〜25%前後が目安とされ、これを下回る状態が続くと販管費を吸収できず資金繰りが悪化します。資材高騰や工期長期化で粗利が細ると、与信の低下や赤字案件の連鎖を招き、倒産リスクが顕在化します。
決算動向でも原価高と長工期による粗利率低下の事例が報じられており、早期の実行予算管理と価格転嫁の徹底が不可欠です。
工務店が実践すべき見積もり戦略
見積もりの精度と契約運用は、粗利を守る最前線です。案件ごとに利益目標を定義し、標準歩掛で原価を固め、価格変動に備えた条項で守りを固めます。
ここでは、工務店が実践すべき見積もり戦略について解説していきます。
現場ごとの目標粗利率を明確に設定する
案件ごとに必要な利益から逆算し、規模・難易度・リスクに応じて目標となる粗利率を設定します。まず、販管費や投資回収を含めた「最低限確保すべき粗利(不可侵ライン)」を明確にし、値引きの裁量範囲や失注の判断基準をルール化しましょう。
見積もりを作成する際は、有効期限や支払い条件などを含めた「総額」で意思決定できる設計にすることが大切です。
歩掛を活用し、原価を正確に算出する
各工種について、標準歩掛を基に労務時間と材料使用量を積み上げ、現場ごとの条件(搬入距離・階層・解体量・養生の有無など)を考慮します。さらに、廃材や予備材のロス率も見込んで積算を行いましょう。
見積もりから実行予算、そして実績までを各現場で照合し、差異が生じた場合は必ず次回の見積もりに反映します。端数処理や小運搬などの見落としを防ぐためには、写真記録と出来高の管理を連動させて確認することが有効です。
スライド条項・見積もり有効期限を設け、リスクを回避する
見積もり書には、必ず価格スライド条項と有効期限を明記します。資材価格指数や労務単価が設定したしきい値を超えて変動した場合は、協議のうえ価格を改定します。
また、納期の遅延や設計変更が発生した際は、追加精算の対象とする旨をあらかじめ明記しておきましょう。
燃料費や為替レートの急変、資材の供給停止といった予期せぬ事態については、免責(対象外)条件として契約書に記載することが望ましいです。
工務店の見積もり値上げを成功させるポイント
材料・労務の高止まり下では、値上げ提案は避けて通れません。しかし伝え方と根拠の示し方次第で、信頼と受注に大きな差が生まれます。
ここでは、工務店の見積もり値上げを成功させるポイントについて解説していきます。
価格上昇の背景を“データで可視化”し、誠実に説明する
値上げを行う際は、まずその前提を客観的なデータで明確に示します。労務単価や建設工事費指数、鋼材・ガラスなど主要資材の市況、さらに為替や物流コスト、納期遅延の実績などを、出典付きの資料として提示しましょう。
また、改定前後の内訳比較や数量根拠、歩掛と実行予算の突合も開示し、価格変動の合理性を説明します。
加えて、省エネ性能や耐久性の向上によるライフサイクルコスト(LCC)の削減効果も併せて示すと、顧客の理解を得やすくなります。
信頼を損なわないコミュニケーションで代替提案する
信頼を保ったまま値上げを受け入れてもらうためには、選択肢を提示する提案型の説明が効果的です。仕様を「基本」「推奨」「高耐久」の3段階で提示し、材料の代替や工程分割、工期調整、補助金の活用、支払い条件の見直しなどもセットで示しましょう。
また、性能・耐久性・デザインなどの優先順位を事前にすり合わせ、どこまでを無償対応とするかを明確にしておくことも重要です。
工務店が粗利率を守るために行うべきこと
粗利が痩せる最大要因は「見えない原価」と「遅れる単価更新」です。ここでは、工務店が粗利率を守るために行うべきことについて解説していきます。
原価をリアルタイムで“見える化”する体制を整える
見積もり(予算)・発注・出来高・請求・支払いをクラウドで一元管理し、工事別・工種別の予実差異を日次で見える化しましょう。出来高の入力はモバイル端末で統一し、写真や検収データと自動連携して転記作業を削減します。
また、発注残・支払い予定・外注費・材料費などのコミット原価をリアルタイムで把握し、設定したしきい値を超えると自動アラートで通知。設計変更や追加指示が出た際は、追加精算ワークフローを即時起動し、赤字リスクを早期に防ぎます。
見積もり単価・歩掛を定期的に更新し、原価上昇をすぐ反映させる
見積もり単価や歩掛は定期的に見直し、常に最新の状態を維持しましょう。仕入価格や労務単価は月次〜四半期ごとに棚卸しを行い、標準単価表と歩掛を更新します。
現場の実績データ(工数・廃材率・小運搬・養生など)を予算と比較し、差異を次回設定に反映。主要資材は価格指数や相見積もりを基に再設定し、結果を見積もりテンプレートへ即時反映します。
更新履歴を社内共有し、最新原価データで積算を統一することで、見積もり精度と利益管理を両立できます。
記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:なぜ今、工務店の値上げが避けられないのですか?
A:人件費の上昇(公共工事設計労務単価が13年連続上昇)と、建材・資材価格の高止まりが同時進行しているためです。このコスト増を価格に転嫁できなければ、粗利率が低下し、経営体力を圧迫します。
Q:顧客が納得して値上げを受け入れるための重要なポイントは何ですか?
A:価格上昇の背景を客観的なデータ(労務単価、資材市況、指数など)で「可視化」し、誠実に説明することです。また、仕様のグレード別提示や代替材料の提案など、顧客に「選択肢」を与える提案型のコミュニケーションを組み合わせることも効果的です。
Q:粗利率を守るために、見積もり・契約段階で工務店が必ず実践すべき戦略は何ですか?
A:主に以下の3点が挙げられます。
1.現場ごとの目標粗利率(不可侵ライン)を明確に設定すること
2.歩掛を活用して原価を正確に算出すること
3.スライド条項や見積もり有効期限を必ず設け、価格変動リスクに備えること
加えて、原価のリアルタイム「見える化」体制を整え、単価・歩掛を定期的に更新することも不可欠です。
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。



