<新着>選ばれる工務店になるには? 激戦市場で選ばれる存在になる独自価値のつくり方
住宅着工戸数が減少し続けるなか、工務店を取り巻く市場はますます競争が激しくなっています。
今年4月からは省エネ基準の適合が義務化されたことで、大手ハウスメーカーや広域展開型ビルダーでは、ZEHやGX志向型住宅に相当する断熱性能を標準化しています。インフレで住宅の価格が高騰する中で、大手ローコスト分譲ビルダーは価格優位性を保っています。
地域密着の工務店が生き残るには、大手に見劣りしない性能と、手が届きやすい価格を実現した上で「他社に負けない独自価値」を打ち出し、「選ばれる存在」になることが欠かせません。
では、独自価値とはどのように築いていけばよいのでしょうか。
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オンリーワンの強みを言語化する
「独自の強み」や「競合他社にはない価値」を、マーケティング用語では「USP(Unique Selling Proposition)」と言います。消費者に分かりやすいUSPの一つが「ナンバーワン」です。「この地域で一番多く住宅を供給している」「この地域で一番長い歴史がある」「標準仕様のUA値が一番低い」などのUSPは、他社にはない強みになります。
まずは自社の強みを改めて整理してみましょう。すると「ナンバーワン」ではなくても、「オンリーワン」と言えることが見えてくるでしょう。大事なのは、それを顧客に伝わる形で言語化することです。
例えば、「職人の技術が高い」「地域で長くやってきた」「誠実な対応を心掛けている」といった要素は、同業他社でも同じことが言えるかもしれません。重要なのは、それを単なる抽象的な言葉で終わらせず、具体的なエピソードや数字に落とし込むことです。
例えば「創業45年、OB顧客からの紹介比率が50%」「大工は全員が自社社員で平均経験年数20年」「地元の学生を毎年採用し、5年以内の離職率0%」といった事実を示すことで、顧客は「安心できる会社だ」と納得できます。
ターゲットを明確にする
「地域の誰からも選ばれる工務店」を目指すのは一見正しいように思えますが、実際には訴求がぼやけてしまいます。独自の価値で差別化するのであれば、むしろ「誰に選ばれる工務店なのか」を明確に定義したほうが、そのターゲット層の心に響きやすくなります。
例えば、子育て世代をターゲットにするのであれば「アレルギーや健康に配慮した自然素材住宅」「子どもの安全や家事効率にこだわった設備・間取り」といった訴求が考えられます。定年退職後の夫婦に向けて「小さな平屋+将来を見据えたバリアフリー設計」のような訴求もあるでしょう。「アーリーアメリカン」「西海岸風」「北欧家具が似合う家」のように、特定の好みのデザインに特化するという方法もあります。
「誰に選ばれたいか」を定めることで、自社の価値提案はぐっとシャープになり、顧客にとっても「自分たちにぴったりの会社だ」と感じてもらえるでしょう。
顧客体験を差別化する
注文住宅の家づくりは、契約から完成まで1年以上に及ぶ長いプロセスです。この間の「体験」が顧客満足度に大きく影響するため、その体験に独自性を持たせることも自社の強みとなります。
- 初期段階から設計担当・コーディネーターが同席して要望をヒアリングする
- 入居者宅見学会で実際にその会社で建てた人の話を聞ける
- VRや生成AIで、完成後の暮らしをリアルにイメージしながら打ち合わせができる
- 室内の塗り壁仕上げや造作家具の一部を施主がDIYで仕上げる
など、他社ではできない体験によって、施主は家づくりの過程そのものを楽しめるようになります。引き渡し後も「OB客感謝祭」や「暮らし方相談会」を定期開催して、関係性を維持することも重要でしょう。「契約から引き渡しまで」だけではなく「暮らし全体を支える存在」として伴走できるかどうかが、価格競争に巻き込まれないカギとなります。
SNSなどのオウンドメディアで発信する
独自価値を持っていても、それが顧客に届かなければ意味がありません。顧客との接点は、かつては完成見学会やチラシが中心でしたが、今やSNS、YouTube、ブログなどを通じて、工務店自身が情報を発信する時代です。
特に地域工務店は「人」で選ばれる比重が大きいため、社長や現場監督、大工といったスタッフの顔や人柄が見える発信が信頼感を高めます。「施工現場でのこだわり」「大工の日常」「社長の家づくりに対する想い」といったストーリーは、紙媒体の広告だけでは伝えきれない魅力を補完します。
近年は、顧客が住宅会社を探す初期段階からオンライン検索やSNSを活用することが当たり前になっています。つまり、発信力を持たない会社は「比較の土俵」にすら上がれない可能性が高まっているのです。自社が発信できるメディア・コンテンツを持つことは、独自価値戦略の最大の武器となります。
ブランドストーリーを持つ
住宅という“商品”だけで選ばれるには、他社よりも高い性能や設計力・デザイン力、価格競争力が必要となります。極端に言えば、他社と同じ設備や建材を採用したり、デザインを真似することもできます。“商品”だけで独自性を出すのは、実はとてもハードルが高いことです。
“商品”以外の要素で選ばれる工務店には、必ず「物語」があります。例えば「祖父の代から3代続けて大工をしている」「地元の山から切り出した木材で家を建てる」といったストーリーは、単なる施工業者ではなく「地域と共に歩む存在」として顧客の心に響きます。会社の思いや物語を言語化することがブランディングとなり、独自価値となります。
また、ブランドストーリーは社員のモチベーションや採用力のアップにもつながります。自社の存在意義を言葉で語れる会社は、顧客だけでなく働き手からも選ばれます。
まとめ ― 激戦市場で生き残るために
人口減少に伴い、新築市場の縮小は避けられません。加えて、規格型住宅やローコスト住宅、リノベーション市場の拡大など、工務店を取り巻く競合環境はかつてなく多様化しています。
この状況で「価格」や「施工力」だけで勝負するのは限界があります。むしろ、他社にはない「独自の強み」を明確にし、それを発信し続けることこそが、工務店が生き残り、選ばれ続けるための唯一の道筋です。
- オンリーワンの強みを言語化する
- ターゲットを明確にする
- 顧客体験を差別化する
- SNSなどのオウンドメディアで発信する
- ブランドストーリーを語る
この5つを実践していくことで、たとえ市場が縮小しても「あなたの会社だから建てたい」と言ってくれる顧客は必ず現れます。激戦市場を勝ち抜くカギは、外の環境ではなく、自社の中に眠る価値を磨き上げることにあるのではないでしょうか?
まずは社内で「うちの会社を一言で表すと?」をテーマに話し合ってみてください。社員全員が同じ言葉で語れるようになったとき、工務店としての独自価値はすでに形になり始めているはずです。
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