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<新着>4号特例縮小で現場混乱! 工務店が知っておくべき申請・設計・顧客対応の法的トラブルとその対策

4号特例縮小で現場混乱! 工務店が知っておくべき申請・設計・顧客対応の法的トラブルとその対策

目次[非表示]

  1. 1.4号特例縮小の変更点と影響
    1. 1.1.何が変わるのか?法改正のポイント
      1. 1.1.1.・4号建築物の廃止と再編
      2. 1.1.2.・審査省略の対象縮小
    2. 1.2.増える提出書類と業務負担
  2. 2.現場で起こる主なトラブル
    1. 2.1.確認申請の遅延
    2. 2.2.工期の長期化とコストアップ
    3. 2.3.顧客との金銭・契約トラブル
    4. 2.4.リフォーム工事での申請漏れ
    5. 2.5.既存不適格建築物をめぐる問題
  3. 3.トラブル事例への対処法
    1. 3.1.申請不備・工期遅延への対応
    2. 3.2.コスト増・契約不適合への対応
    3. 3.3.リフォーム工事でのトラブル対応
    4. 3.4.顧客対応の基本姿勢
  4. 4.トラブルを防ぐための対策
    1. 4.1.社内体制と業務フローの見直し
    2. 4.2.専門スキルと人員の強化
    3. 4.3.スケジュールと契約内容の見直し
    4. 4.4.施主への丁寧な事前説明と合意形成
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.弁護士法人コスモポリタン法律事務所杉本 拓也(すぎもと たくや)

4号特例縮小の変更点と影響

2025年4月に施行された建築基準法改正により、長年慣行となっていた木造住宅の「4号特例」が大幅に縮小されました。この変更は、建築確認申請のプロセスを大きく変え、工務店の業務に多大な影響を及ぼすことが確実です。

何が変わるのか?法改正のポイント

今回の法改正の核心は、小規模な木造住宅の建築確認審査を一部簡略化してきた「4号特例」の対象範囲が大幅に縮小される点にあります。

・4号建築物の廃止と再編

従来、木造2階建て以下・延べ床面積500m2以下の建物などが該当した「4号建築物」という区分が廃止されます。代わりに「新2号建築物」と「新3号建築物」に再編され、一般的な木造2階建て住宅は「新2号建築物」に分類されます。

・審査省略の対象縮小

これまで審査が省略されていた「新2号建築物」も、今後は確認申請と審査が原則必須となります。審査省略が継続されるのは、延べ床面積200m2以下の木造平屋建てなど、ごく小規模な「新3号建築物」のみです。

増える提出書類と業務負担

この変更に伴い、確認申請時に提出すべき書類が増加します。新2号建築物(一般的な木造2階建て住宅など)では、従来は不要だった以下の図書の提出が義務付けられます。

1.構造関係規定の図書:構造計算書など、建物の安全性を証明する書類
2.省エネ関連の図書:断熱性能など、省エネ基準への適合を証明する書類


2025年4月からは、原則すべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されるため、小規模住宅であっても構造計算と省エネ対応が不可欠となります。

これにより、設計段階から綿密な計画が求められ、確認申請業務は複雑化。建築士や工務店にとっては、書類作成や計算業務の負担増は避けられません。

現場で起こる主なトラブル

法改正への移行期間中(経過措置として、令和7年4月1日から令和8年3月31日までに工事に着手する建築物については、一定の条件を満たした場合、壁量基準や柱の小径について1年間の経過措置が設けられます。)は、現場でさまざまなトラブルが懸念されます。

確認申請の遅延

新制度への不慣れから、構造計算書や省エネ関連書類に不備が生じ、申請が差し戻されるケースが多発する可能性があります。審査機関の混雑も予想され、確認済証の交付が大幅に遅れ、着工スケジュールに深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

工期の長期化とコストアップ

詳細な設計や計算に時間を要するため、全体の工期が長期化する傾向にあります。また、申請手数料の上昇、構造計算等を外部に委託する費用、高性能な建材の採用による材料費の高騰など、建築コストの増加は避けられません。

顧客との金銭・契約トラブル

コストアップや工期の長期化について施主に十分な説明がなされていない場合、「聞いていない」といったクレームや値引き交渉に発展しかねません。最悪の場合、契約不適合を理由とした損害賠償請求などの法的紛争につながるリスクがあります。

リフォーム工事での申請漏れ

新築だけでなく、大規模なリフォームや増改築も改正の影響を受けます。柱や梁など主要構造部の過半を修繕・模様替えする場合、従来は不要だった確認申請が義務化されます。この変更を知らずに無許可で工事を進めると、是正命令や撤去を求められるなど、施主を巻き込む重大なトラブルに発展します。

既存不適格建築物をめぐる問題

改正前に建てられた建物が、新基準を満たさない「既存不適格」な状態になるケースも出てきます。既存不適格自体は違法ではありませんが、将来の増改築に支障が出たり、資産価値に影響したりする可能性があります。改正を見越さずに旧制度で建築した場合、顧客から企業姿勢を問われることも考えられます。

トラブル事例への対処法

万が一トラブルが発生してしまった場合、迅速かつ誠実な対応が求められます。

申請不備・工期遅延への対応

申請が差し戻された場合は、速やかに不備を特定し、構造設計一級建築士など外部の専門家の力も借りて訂正します。工期が遅れる際は、早期に施主へ状況を説明し、法改正という不可抗力的な理由であることを丁寧に伝えて理解を求めましょう。

そのうえで、工期延長に関する合意書や変更契約を交わすことが賢明です。

コスト増・契約不適合への対応

追加費用について施主から異議が出た場合は、国土交通省の資料など客観的な根拠を示して内訳を具体的に説明します。同時に、自社でコスト削減できる部分がないか検討・提案し、施主の不信感を和らげる努力も必要です。

万が一、基準に適合しない建物を建ててしまった場合は、速やかに専門家による調査を行い、補強工事などの是正策を提示します。誠意ある謝罪と自発的な是正努力が、信頼回復の第一歩です。

リフォーム工事でのトラブル対応

無許可工事が発覚した場合、直ちに工事を中止し、所管行政に報告・相談します。遅れてでも確認申請が可能なのか、あるいは計画の見直しが必要なのか、指示を仰ぎましょう。施主には法的制約を正直に説明し、工事規模の縮小といった代替案を提示して施主の協力を得られるよう努めます。

顧客対応の基本姿勢

すべてのトラブルにおいて、「説明責任」と「記録の保持」が鍵となります。法改正の背景を、図や資料を用いて分かりやすく解説し、安全性向上のためのルール変更であることを伝えましょう。口頭での約束は避け、協議内容は議事録や書面に残すことで、「言った・言わない」の争いを防ぎ、法的リスクを低減できます。

トラブルを防ぐための対策

トラブルを未然に防ぐためには、社内体制のアップデートと顧客への丁寧な説明が不可欠です。

社内体制と業務フローの見直し

法改正の内容を社内全体で正確に共有し、設計・申請業務のフローを更新します。特に木造2階建てでは構造計算や省エネ関連図書の作成が必須となるため、それを見越したスケジュール管理を徹底しましょう。社内のチェック体制を強化し、申請前に複数人で図書を確認するプロセスを導入することが有効です。

専門スキルと人員の強化

自社に構造計算などの専門スキルを持つ人材がいない場合、早期に外部の構造設計事務所や専門家と連携体制を築いておくことが重要です。いざという時に迅速にサポートを得られるネットワークが、プロジェクト頓挫のリスクを大幅に軽減します。無理に自社だけで抱え込まず、「チーム体制」で新制度に対応する意識を持ちましょう。

スケジュールと契約内容の見直し

設計期間や確認申請の審査期間を十分に考慮し、工期にはバッファ(余裕)を持たせます。契約書には、法改正など不可避の事由で遅延が生じた場合の取り扱いを明記しておくと安心です。また、追加業務にかかる費用を最初から見積もりに反映させ、後からの増額交渉が生じないようにすることが肝要です。

施主への丁寧な事前説明と合意形成

何よりも重要なのが、契約前の丁寧な説明です。「2025年の法改正により、安全性向上のため追加の設計と審査が必要になる」「そのために設計期間と費用が従来よりかかる可能性がある」といった影響を、数値や根拠と共に書面で伝えましょう。施主の理解と合意を得ておくことが、将来の誤解やトラブルを防ぐ最大の防御策となります。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:4号特例の縮小で工期が延びそうです。施主への説明や損害賠償請求への備えはどうすればよいでしょうか? 
A:
契約前に、法改正に伴う審査の長期化リスクを書面で明示し、余裕ある工期を設定することが最も重要です。契約書に「法令の制定改廃による遅延は、工期延長の正当な理由とする」といった不可抗力に関する特約を盛り込むことも有効な備えとなります。

万一遅延した場合は、速やかに進捗を報告し、法対応という客観的な理由を丁寧に説明して協議します。このような誠実な対応と事前の合意形成が、施主の理解を得て損害賠償のリスクを低減させます。

Q:小規模なリフォームでも確認申請が必要と聞きました。どんな場合に申請が必要で、工務店はどう備えるべきですか? 
A:
柱や梁、床、屋根といった「主要構造部」の過半に及ぶ大規模な修繕・模様替えを行う場合、改正後は確認申請が原則必要です。特にリフォーム会社は、この変更を知らずに無許可工事を行うリスクに注意が必要です。

備えとして、まず案件ごとに工事範囲を精査し、申請の要否を判断する社内チェック体制を確立してください。判断に迷う場合は、着工前に建築士や行政へ相談することを徹底し、施主にも計画の初期段階で申請の可能性を説明し、理解を得ておくことが重要です。

●おすすめコラム

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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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