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工務店が100年続く老舗と呼ばれるためのリブランディング成功戦略! 伝統と革新のバランス

工務店が100年続く老舗と呼ばれるためのリブランディング成功戦略! 伝統と革新のバランス

あなたの会社は、創業からどのくらいの年月事業を続けていますか。歴史の長さは信頼感を醸成するうえで強力な武器になりうる半面、固定化されたブランドイメージが顧客獲得の機会損失を生んでいるかもしれません。

工務店は暮らしの基礎となる家づくりを担う業種です。長く事業を続けていくためには、時代による暮らしぶりの変化に合わせたリブランディングを行うことも必要となります。

この記事では、伝統と革新のバランス、成功させるためのステップ、インナーブランディングの重要性といった、リブランディングのポイントを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.リブランディングの必要性と得られる効果
  2. 2.伝統と革新をバランスよく取り入れた成功戦略
    1. 2.1.伝統の活用
    2. 2.2.革新の導入
  3. 3.リブランディングを成功させるための重要なステップ
  4. 4.リブランディングを実行する際の注意点
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.杉山 啓(IMASSA認定マーケティング実務士、行政書士、統計調査士)

リブランディングの必要性と得られる効果

長く事業を続けている工務店は、さまざまな変化に直面します。外部環境においては営業エリアの人口や産業構造の変化、会社内部においては経営者ほか主要な人員の交代といった変化が主に挙げられます。

こうした変化が積み重なっていくことにより、会社に対して抱かれている既存のブランドイメージと、提供できる価値・提供したい価値の間に乖離が生じていくことがあります。

たとえば、営業エリアの人口の高齢化に合わせて高齢者世帯向けのバリアフリーリフォームやデザイン性の高い注文住宅の案件を獲得していこうと思っても、既に「子育て世帯向けに規格化された低コストの住宅を供給する会社」というブランドイメージが確立されていると、新しいターゲット層の案件獲得にはなかなか苦労するものです。

狙いとする客層のほかにも、強みとして発信したい建材や技術、設備等を変えたい場合もあるでしょう。特に経営者が代替わりするタイミングは、経営の方針も大きく見直す契機になることと思います。このような場合には、思い切ってリブランディングを行うのもよい手段となります。

リブランディングが成功すれば、自社が提供していきたい価値と見込み顧客から受ける期待感が一致しやすくなります。広告宣伝の費用対効果も大きくなり、営業の際にも自信を持って提案できるようになるでしょう。

リブランディングは社外だけでなく社内に対しても効果をもたらします。会社として事業に取り組む方向性が明示されることで、採用や人事評価の方向性も定まり、従業員が迷いなく業務に邁進できるようになるでしょう。

伝統と革新をバランスよく取り入れた成功戦略

リブランディングを成功させるためには、会社が保ってきた伝統的なものと時代に合わせた革新的なものをバランスよく融合させることが必要です。

伝統の活用

まず事業の継続年数の長さは、さまざまな形でブランディングに活用できます。長年にわたって工事を請け負い続けてきたこと自体が見込み顧客にとっての安心材料になりますし、数多くの実績を提示できることは信頼感を醸成するための強力な武器になります。

創業から100年以上続く企業、いわゆる「100年企業」などでは、自社の歴史や創業の経緯をブランディングに活用する例が多く見られます。これらは会社固有のエピソードですから、他社と異なる独自性を示すことができます。

また、創業者の熱意や会社が伝統的に大事にしてきた理念などを伝えることで、事業に対する顧客の共感を得ることも狙えます。

創業年から10年ごとなどの「周年」もブランディングに活用しやすい好機です。リブランディングも「周年」を機に行えば、従業員や顧客、その他取引先などの関係者から納得感を持たれやすいでしょう。リブランディングを行わない場合でも、イベントや広告等を通じて自社の価値を改めて周知し、ブランディングを強化するよい契機となります。

革新の導入

住宅業界においては、家づくりは単なるものづくりではなく、その家のよりどころとなる“暮らしをデザインする”という観点を忘れてはなりません。ブランディングにおいても技術力や仕事の丁寧さなどを示すだけでは不十分で、現代と近未来の暮らしに対する深い理解、そして高いデザイン力を示せることが望ましいでしょう。

この点において、ブランドイメージには広告物だけでなく、顧客と接する際の従業員の言動や業務のあり方も大きく影響することに注意が必要です。

たとえばウェブサイトからの問合せや資料請求のしやすさ、ITツールによって業務が効率化されているか否かによっても、現代の暮らしに沿った家づくりができそうかどうかという印象を左右するでしょう。

営業の際に使う提案資料に生成AIツールで作った画像を使うことで、商談の手間を減らしながら先進的なブランドイメージを獲得しようとする試みも広がっています。

リブランディングを成功させるための重要なステップ

ここからはリブランディングを成功させるための大事な手順を解説していきます。

まずは過去の実績を基に、自社の強みを明確化することから始めましょう。
​​​​​​​顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の観点から考える3C分析や、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つの観点から内外の状況を考えるSWOT分析など、マーケティング論のフレームワークを用いると整理しやすいかもしれません。

明確化した強みはブランドの核になります。これに加えて顧客から求められる価値と、自社が今後提供していきたい価値も踏まえて、ブランドコンセプトを定めましょう。このコンセプトが簡単にブレてしまうようなものでは困ります。端的に自社のブランドを表すキャッチコピーに落とし込めるまで、入念に考えてください。

コンセプトが定まったら、各種の広報媒体を整えていきます。ロゴやウェブサイト、パンフレットは特に重要です。もしも今の屋号が新しいブランドコンセプトと合わないものだったり、屋号とは別に使っている商標がブランドコンセプトによりふさわしいものだったりする場合は、屋号の変更も検討するとよいでしょう。登記などにかかるコストも、リブランディングの必要経費です。

前段でも少し触れましたが、ブランドイメージには広告物だけでなく、顧客と接する際の従業員の言動や業務のあり方も大きく影響します。社内はもとより、できれば下請けの職人さんなどに対しても、自社の特徴や顧客に提供していきたい価値を理解してもらう取り組みを十分に行いましょう。こうした取り組みをインナーブランディングと言います。

リブランディングを実行する際の注意点

リブランディングは事業の根幹を左右する大きな取り組みです。世界的な大企業でも、リブランディングに失敗して大きな損失を被った事例は数多く見られます。逆効果にならないよう注意しましょう。

まずリブランディングに着手する前に、現状持たれているブランドイメージを十分に把握する必要があります。現に認められている価値を切り捨てるようなリブランディングを行うと、積み上げてきた実績を生かせなくなる恐れもあるためです。

広く認知されているロゴや屋号を変更する場合は、変更前と同じ企業であることがわからなくなる恐れもあります。前後の連続性を感じられる変更にしたり、変更後の広報を十分に行ったり、といった手立てが必要です。

そして、外部に対する発信と同じように、インナーブランディングにも注力しましょう。社内の理解が不十分だと顧客に対するリブランディングの効果が減るばかりか、従業員や関係者の離反につながる恐れもあるため要注意です。説明や周知は丁寧に行ってください。

ブランディングは効果が出るまでに時間のかかる、長期的視点の施策です。短期間で方針を変えることはかえって信頼を失うことにもつながるため、目先の売り上げや問合せ件数などの数値目標にとらわれず、入念な計画に基づいてじっくりと取り組みましょう。

●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:リブランディングはどんなときに必要?
A:
会社に対して抱かれているブランドイメージと、提供できる価値・提供したい価値の間に乖離が生じていたらリブランディングの契機です。経営者の代替わり等で経営方針を見直す際にも検討するとよいでしょう。

Q:伝統と革新をどう取り入れたらいい?
A:
長年の実績や創業以来のエピソードは、信頼感や共感を得るための武器になります。取り組みの契機として「周年」を活用してもよいでしょう。最新の生成AIツールなども使って、現代と近未来の暮らしに対する深い理解や高いデザイン力を示すことも重要です。

Q:リブランディングを成功させるための注意点は?
A:
まずは自社の強みや既存のブランドイメージを十分に把握したうえで、確固たるブランドコンセプトを定めましょう。社外に対する発信と同等に、社内に対するインナーブランディングも十分に行う必要があります。長期的視点で丁寧に取り組みましょう。

●関連コラムはこちら
 ≫ 住宅会社におけるブランディングの重要性と意識すべきポイントとは?
 ≫ 地域内でのブランディングとマーケティング力を高めるには? 住宅業界におけるインフルエンサー活用の効果

執筆者

杉山 啓(IMASSA認定マーケティング実務士、行政書士、統計調査士)

インターネット行動履歴データに基づくマーケティング支援を行うベンチャー企業に勤めていた際に、住宅、情報通信、出版、化粧品など多岐にわたる業界の大手企業を対象とするコンサルティングや法人営業に従事した。

2018年にマーケティング・ビジネス実務検定A級(IMASSA認定マーケティング実務士)、統計調査士、統計検定2級に合格。Uターン後は愛媛県内の道の駅でEC運営を担当し、月間のサイト訪問者数を前年比約2倍、売上を前年比約1.3倍に増やした経験ももつほか、非営利で哲学対話・哲学カフェのワークショップも継続的に主宰している。2024年に行政書士に登録し、企業間の契約書類作成等の法律業務も担う。

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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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